どうも、妖怪退治といえば「うしおととら」のダルです。
源頼光という武士をご存知でしょうか。日本でも数少ない妖怪バスターとして名高い猛者で、大江山の酒呑童子を斬ったことで有名です。
最近ではFGOの影響もあって知名度が高まっているかもしれませんね
源頼光の愛刀は鬼を斬ったことから「童子切安綱」と呼ばれ、後に天下五剣に数えられ、現在では国宝に指定されています。
今回は鬼を斬った「源頼光」とその家臣である「頼光四天王」の伝説についてです。
源頼光とは何者なのか?
まずは「源頼光(みなもとのよりみつ)」がどんな人物かざっくりとご紹介します。
源頼光は平安時代中期の人物で、ちょうど武士という身分が起こり始めてきた時代の武士です。
摂関政治で有名な藤原氏がブイブイ言わせていた時代ですね
平安時代中期の武士が生まれたばかりの時代に生きた源頼光は、そこそこ高い身分の貴族であり武士でした。時の大権力者「藤原道長」と近しく、道長が隆盛を誇るようになると、側近的立場であった源頼光の地位も向上するという貴族的側面がありました。
武勇に優れることで有名で「朝家の守護」と呼ばれました。※朝家:天皇を中心とした一家を現す言葉で転じて、国のことも意味します。
つまりは国を守る要のような存在でしょうか。
また頼光は武芸だけでなく、勅撰和歌集に三首もノミネートされるなど文化人的面もありました。
多方面に才能があり地位もあって強いあれ?完璧超人?っていう人です
その強さを見込まれ、大江山夷賊追討の勅命を賜り、頼光四天王らと共に合計6人で丹波国大江山へ向かいます。勅命とは天皇からの命令なので、非常に大きな案件だと伺えます。
大江山の酒呑童子・茨木童子の討伐へ向かう
源頼光が天皇から討伐を命じられたのは、京都の大江山に巣食う鬼 「酒呑童子(しゅてんどうじ)」と「茨木童子(いばらきどうじ)」 の討伐です。
鬼といえば代表的な「酒呑童子」と「茨木童子」が住んでいた大江山は、現在の京都府丹後半島にある山とされています。
京の都で若者や姫君が神隠しにあう事件が続発していたため、陰陽師の安部晴明に占わせたところ大江山に住む鬼の仕業であると判明し、討伐の命が下ったそう。源頼光は自らの家臣である頼光四天王らを率いて討伐へ向かいます。
鬼に近づく秘策と神便鬼毒酒で酒盛りに誘う
源頼光一行は鬼の討伐に向かう道中で、山伏や僧で構成された旅の一向に出会います。
「武士の恰好で行ってもあかん。配下の鬼がわんさかおるのにどないすんねん。なんか、ほら、山伏とかなんや変装してから行き。」とごもっともなアドバイスを貰います。
そして「星兜(ほしかぶと)」と「神便鬼毒酒(じんべんきどくしゅ)」というアイテムを授かります。この山伏たちは頼光さんがお参りした神社の神様ご一行だったのです。
RPGのイベント感が凄いなあって感じ。流石ご先祖様、脚色の発想が今と変わりません
神様からのアドバイスとアイテムを携えて、鬼どもの根城を目指す頼光ご一行。大江山に捕まっていた姫の手助けや、山伏姿のおかげでなんとか童子たちに会うことが叶います。
- 源頼光「これね、都でバカ売れのお酒。獺祭とか目じゃないぐらい人気なんすよマジオススメ。」ジンベンキドクシュ
- 酒呑童子「ほんまにぃ?確かにえらいええ匂いするお酒やわ。せやったら今晩は宴にしまひょうかね。」
- 鬼ABCDE「ウェ――――――イ!!」
源頼光一行は、まんまとお酒大好きの酒呑童子に、神便鬼毒酒を飲ませることに成功します。
神便鬼毒酒はその名の通り鬼をも殺す毒です。本物の鬼殺し。宴で盛り上がっているうちに、その毒で体が痺れやがて鬼たちは眠ってしまいます。
源頼光と酒吞童子の首を落とした童子切安綱
神便鬼毒酒で鬼たちが眠ってしまうと、源頼光一行はチャンスとばかりに変装を解き武器を構えます。
源頼光たちの動きを察知して酒呑童子は目を覚ましますが、時すでに遅く神便鬼毒酒のせいで全く動けません。
そこで「情けなしよと客僧たち、いつわりなしと聞きつるに、鬼神に横道なきものを」と吐き捨てたところで首を刎ねられます。
- 酒呑童子:客人たちよ。あんたらの話を信じたのにこの仕打ちかいな。鬼は卑怯なことはせんかったのになあ
- 源頼光:いや、悪事働いてきたお前に言われる筋合いはない ズバッ
お前が言うなと言ったとか言わなかっただとかで、首を刎ねられたことによりこれが酒呑童子の辞世の句となります。
首を刎ねてもまだ噛みつきにかかってきましたが、行き道に貰った星兜のおかげで頼光は無傷で済みます。
神社参拝イベントをこなしたおかげで攻略できるって、やっぱりRPG感がある…と感じるのはゲーム脳だからでしょうね
この時に酒呑童子を討ち取ったのが「童子切安綱」と呼ばれる刀(安綱は刀工の名前)。明治になってから「天下五剣」に数えられ、現在は東京国立博物館に収蔵されており国宝にも指定されています。
酒呑童子は日本三大妖怪にも数えられるビッグネーム。大妖怪を斬ったため、刀も同じくビッグネームになりました。
酒呑童子が討たれたことで敵わぬと逃げる茨木童子
酒呑童子が頼光によって退治されていた時、周りでは頼光四天王VS鬼の決戦が行われていました。
四天王としては酒呑童子討伐の邪魔をさせたくない、鬼たちは酒呑童子を助けたいというどっちが悪者かわからない構図です。
そんな中、茨木童子は四天王の「渡辺綱(わたなべのつな)」と戦っていました。しかし渡辺綱と戦っているさなかに酒呑童子は討たれ、残りの鬼たちも次々に討ち取られます。
その惨状を見た茨木童子はこれは敵わぬと逃走します
節分でも渡辺・坂田姓は豆まきしない?
テレビでもちょくちょく取り上げられるトリビア的な話として、″渡辺姓の人は節分に豆をまく必要がない″というものがあります。これも源頼光及び四天王が大きく関わる話です。
源頼光配下の頼光四天王の中でも、特に有名なのが「渡辺綱(わたなべのつな)」です。
大阪の中之島に今でもある渡辺橋からとって、渡辺と名乗るようになった渡辺姓の開祖となる人物。
先祖は源氏物語の光源氏のモデルになっただとかで渡辺綱も美男子だったそう
酒呑童子が討ち取られたことで逃走した茨木童子ですが、これに懲りず渡辺綱を強襲します。しかし屈強な渡辺綱は逆に茨木童子の腕を切り落としてしまいました。
このことから鬼たちは渡辺綱を恐れ、渡辺姓の者に手出ししなくなったといわれます。
そして坂田さんも同じく、豆まきをする必要がないとされています。
頼光四天王が一人「坂田金時」は、まさかり担いだ金太郎さんのこと。熊と戦う超つえーやつみたいな感じでスカウトされたそうです。
金太郎のお話では最後鬼を討伐するため、坂田金時に改めた後にも鬼を討伐している坂田姓を、鬼が恐れるのも無理ありません。
鬼を討伐した渡辺・坂田姓の子孫を鬼たちは恐れているというわけです
鬼たちにも意外とネットワークがあるんでしょうね、きっと。あいつやべえから近づくなよみたいな。
鬼や妖怪は中央政権に従わない者たちだった?
源頼光と四天王(歌川国芳画)
大江山の鬼たち以外にも、源頼光は土蜘蛛という妖怪も討伐しており、配下である四天王もそれぞれなんらかの討伐エピソードを持っています。
つまり源頼光と四天王は日本屈指の妖怪バスターズというわけです。
酒呑童子や土蜘蛛など、妖怪と呼ばれてきたものは朝廷に従わない人間たち(=朝廷からすると人間ではない)のことなのではともいわれています。
大江山は鉱山として栄えていたことから、そういった朝廷に従わない独自の集団を討伐した話なのでは…というわけです。
そう考えると酒吞童子が最期に発した「情けなしよと客僧たち、いつわりなしと聞きつるに、鬼神に横道なきものを」の意味が変わって聞こえますね
鬼=悪とするのであればただの捨て台詞ですが、鬼が朝廷に滅ぼされた一族だとすれば、卑怯な手で攻めてきた者たちへの恨み言のように思えます。
ヤマタノオロチなど大昔から存在する伝説は、鉱山や鍛冶など独自の資源や技術を持った人たちが中央政権によって従わされた・征服されたことの比喩なのではといわれています。
果たして酒吞童子や茨木童子といった鬼の正体とはなんだったのでしょうか。
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